診療では、いろいろな場面で方針を決めます。
この歯を残すのか。
義歯を作るのか。
どんな形にするのか。
まず何から始めるのか。
もちろん、何となく決めるわけではありません。
診察して、検査して、患者さんの希望も聞いて、その時点でいちばん良いと思う方法を選びます。
でも、そこで終わりではありません。
実際に治療を始めると、最初にはわからなかったことが見えてくることがあります。
思っていたより使いやすい。
逆に、思ったほど使えない。
痛みが出る。
生活の中では扱いにくい。
患者さん自身の希望が変わることもあります。
体調が変わることもあります。
そうなれば、最初に決めた方針をそのまま守ることより、
今の状況に合わせて考え直すこと
の方が大切になります。
そのとき、ときどき、
「前に言われたことと違う」
と思われることがあります。
それはもっともなことだと思います。
最初には「こうしましょう」と説明されていたのに、途中で違う話になれば、どうしてだろうと思うのは当然です。
ただ、方針が変わることは、必ずしも最初の説明が間違っていたという意味ではありません。
最初の時点では、そのときにわかっていることをもとに考えます。
そして治療を進める中で、新しいことがわかる。
実際に使ってみて初めてわかる。
体や生活の状況が変わる。
そうした新しい情報が増えれば、それに合わせて判断が変わることがあります。
むしろ、新しい情報が増えたのに、
「最初にこう決めたから」
という理由だけで方針を変えない方が、不自然な場合もあります。
もちろん、方針を変えるなら、
なぜ変わったのかをきちんと説明すること
も大切です。
「前と言っていることが違います」で終わらせるのではなく、
最初は何を見てそう考えていたのか。
その後、何が新しくわかったのか。
だから今は、なぜこちらの方がよいと考えているのか。
そこまで共有できれば、
「話が変わった」のではなく、
「状況が変わったから、考え直した」
ということが伝わりやすくなると思います。
診療は、最初に正解を当てるゲームではありません。
その時々で、
何が起きているのか。
何がうまくいっているのか。
何がうまくいっていないのか。
患者さんは今、何を望んでいるのか。
それを見ながら、必要なら方針を修正していく。
その繰り返しなのだと思います。
だから、治療方針を決めることと同じくらい、
「いつ見直すか」
も大切です。
最初の判断にこだわるより、今の患者さんを見る。
治療方針は、一度決めたら終わりではありません。
診療を続けながら、考え続けるものなのだと思っています。

コメント