病気の治療を受ける前に、
「普通に食べられています」
と話される患者さんは少なくありません。
その言葉を聞くと、口の中には大きな問題がないようにも思えます。
でも、実際にはそうとは限りません。
合わない義歯を、少しずつ使い方を工夫しながら使っている。
片方では噛みにくいので、反対側ばかりで噛んでいる。
硬いものは避けている。
小さく切れば食べられる。
時間をかければ何とか食べられる。
そうやって、口の中に多少の問題があっても、人はかなり上手に補いながら生活しています。
本人にとっては、それがいつもの食べ方なので、
「食べられています」
という答えになります。
ところが、手術や大きな治療を受けると、そのバランスが崩れることがあります。
体力が落ちる。
食事に使える時間やエネルギーが減る。
口が乾く。
口を動かしにくくなる。
食事の形が変わる。
それまで何とか補えていた小さな問題が、急に大きな「食べにくさ」になることがあります。
治療によって、新しい問題が起こったというだけではありません。
もともとあった問題を、それまで本人が上手に補っていた。
そんな場合もあります。
だから、治療前に「食べられている」と聞いても、それだけで口の状態は大丈夫だとは考えません。
歯は痛くないか。
義歯は本当に使えているか。
噛める場所は偏っていないか。
口が乾いていないか。
食べるために、何か無理をしていないか。
治療前にそうした点を見ておくことには意味があります。
すべてを治してから治療に臨めるわけではありません。
時間が限られていることもあります。
それでも、あらかじめ問題を知っていれば、治療後に食べにくくなったとき、
「何が変わったのか」
を考えやすくなります。
「食べられる」という言葉は、とても大切です。
でも、その一言の中には、
どうやって食べているのか
という情報までは入っていません。
だから私は、
「食べられていますか」
だけではなく、
「どんなふうに食べていますか」
まで見ておきたいと思っています。

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