「やわらかいものなら食べられます」

「食事はどうですか?」

そう尋ねると、

「やわらかいものなら食べられます」

という返事が返ってくることがあります。

お粥。

うどん。

豆腐。

煮物。

柔らかく煮た野菜。

確かに、食事はできています。

だから、

「食べられています」

という言葉も間違いではありません。

でも、歯科としては少し気になります。

以前は何を食べていたのでしょうか。

肉はどうでしょう。

漬物はどうでしょう。

リンゴはどうでしょう。

以前は普通に食べていたものを、

少しずつ食べなくなってはいないでしょうか。

診察をしていると、

「歳を取ったからね」

と言われることがあります。

もちろん、それも理由のひとつかもしれません。

でも、

入れ歯が合わなくなっている。

歯が少なくなっている。

口の中が痛い。

口が開きにくい。

そんな理由で、

硬いものを避けるようになっていることもあります。

そして、多くの場合、

本人は困っていません。

困っていないというより、

上手に適応しています。

肉が噛みにくければ食べない。

野菜が食べにくければ柔らかく煮る。

リンゴが噛めなければ、バナナを食べる。

その人なりに工夫して生活しています。

だから、

「やわらかいものなら食べられます」

という言葉になります。

それは決して悪いことではありません。

生活を続けるための知恵です。

でも、

その工夫の背景に、

何か変化が隠れていることがあります。

私は、

「やわらかいものなら食べられる」

という言葉を聞くと、

「いつ頃からそうなったのだろう」

と考えます。

そして、

「何か困っていることはありませんか」

と聞いてみます。

食べることは、

食べられるか、

食べられないか、

の二択ではありません。

何を食べているのか。

どのように食べているのか。

以前と比べて変わったことはないか。

そんな小さな変化の積み重ねの中に、

食べる力の変化が隠れていることがあります。

やわらかいものを選ぶこと自体は悪いことではありません。

でも、

もし以前と比べて食べるものが変わってきたのなら、

その理由を少し考えてみてもいいのかもしれません。

私はそんなことを考えながら、

患者さんの話を聞いています。

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