「入れ歯って具合悪いもんやなぁ」

先日、ある患者さんと話をしていました。

入れ歯はいつ作りましたか?

そう尋ねると、

「4年くらい前かな」

と教えてくれました。

では、その後も歯科へ通っていましたか?

そう聞くと、

「いや、一回も行ってない」

とのこと。

そして、少し笑いながら、

こんな言葉を話してくれました。

「入れ歯って具合悪いもんやなぁ」

その言葉を聞いて、

私は少し考えてしまいました。

本当にそうなのだろうか、と。

もちろん、入れ歯は万能ではありません。

自分の歯と全く同じようにはいきません。

最初は違和感もあります。

痛みが出ることもあります。

外れやすいこともあります。

でも、

入れ歯は作って終わりではありません。

実際に使ってみて、

痛いところがないか。

食べにくいものはないか。

外れやすくないか。

そうしたことを確認しながら、

少しずつ調整していくものです。

メガネも、

作ったその日から完璧に合うとは限りません。

靴も、

履いてみて初めて分かることがあります。

入れ歯も少し似ています。

使いながら調整して、

その人の生活に合わせていくものです。

でも、

患者さんから話を聞いていると、

「痛いけど、こんなものだと思っていた」

「合わなくなったけど、歳だから仕方ないと思っていた」

という方に出会うことがあります。

それは、

患者さんが悪いわけではありません。

もしかすると、

歯科側も、

「使ってみて困ったことがあれば、また来てください」

ということを、

十分に伝えられていなかったのかもしれません。

そして、

私が気になるのは、

入れ歯そのものよりも、

その後の食べ方です。

入れ歯が合わない。

だから、

肉を食べなくなる。

野菜を避けるようになる。

柔らかいものばかりになる。

食事に時間がかかるようになる。

でも、

人はそうした変化に少しずつ慣れていきます。

工夫しながら生活します。

だから、

本人は案外困っていないこともあります。

「入れ歯って具合悪いもんやなぁ」

という言葉の裏には、

そんな長い時間の変化が隠れていることがあります。

私は、

入れ歯があるかどうかよりも、

使えているかどうか。

そして、

以前と同じように食べられているかどうか。

そんなことを気にしながら、

患者さんの話を聞いています。

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