撤退期の線引き―手を引くのではなく、責任の範囲を絞り直す

訪問歯科診療を終える時期に入ってから、何をやって、何をやらないのかを、その都度考え直す必要があった。
通常時と同じように何でも引き受けることはできない。一方で、終わるからといって必要なことまで雑に扱うわけにもいかない。その間で、自分がどこまで責任を持つのかを言葉にしなければならなかった。

撤退期には、通常時と同じ運用はできない

訪問歯科診療がこの先も続くことを前提にしている時期なら、少し先を見越した対応もできる。
しかし、終了が決まっている撤退期には、その前提自体が変わる。継続的なフォローが必要な処置や、後の調整を前提にした介入は、そのままの形では引き受けにくくなる。

終わる時期に入ったからこそ、通常時と同じやり方を続けることが、かえって無責任になることもある。

線を引くことは、見捨てることではない

撤退期に必要なのは、何もかもやめることではない。
むしろその逆で、その場で完結することにはきちんと責任を持ち、継続対応が必要なものは次へ渡す、という整理が必要になる。

撤退期は、手を引くのではなく、責任の範囲を「その場で完結すること」に絞り直す。

この感覚を持っておかないと、優しさのつもりで曖昧に関わり続けた結果、誰が責任を持つのか分からない状態を作ってしまう。

何でも引き受けることが誠実とは限らない

医療者側としては、最後までできるだけ応えたい気持ちがある。
ただ、終わりが見えている時期に、継続できないことまで引き受けるのは、必ずしも誠実とは言えない。むしろ、必要なことを必要な形で次へつなぐ方が誠実な場合もある。

断ること自体が冷たいのではない。
曖昧に抱え続けて、結果として混乱させる方がよほど不誠実だと思う。

まとめ

撤退期は、手を引く時期ではなく、責任の範囲を絞り直す時期なのだと思う。
その場で完結することには責任を持つ。継続が必要なものは次へ渡す。最後まで誠実でいるためには、その線引きが必要だった。

※この記事は「訪問歯科診療のたたみ方」シリーズの一部です。

前の記事:
訪問歯科診療をたたむ数か月で見えたこと

次の記事:
訪問歯科診療の終了を伝え始めたときに起きたこと

シリーズ一覧はこちら。

コメント

タイトルとURLをコピーしました