「わかりやすくしてください」と言われることがあります。
たしかに、難しい言葉を減らしたり、文章を短くしたり、情報を整理したりすることで、伝わりやすくなることはあります。
でも、わかりやすくすることと、内容を薄くすることは同じではありません。
説明を短くしすぎれば、大切な条件や前提まで消えてしまうことがあります。
専門用語を全部なくせば、かえって正確さを失うこともあります。
図を単純にしすぎれば、見た目はすっきりしても、本当に伝えたかった関係が見えなくなるかもしれません。
「わかりやすい」というのは、情報が少ないことではないと思います。
必要な情報が、必要な順番で、受け手に届くこと。
そのために、難しいところはかみ砕く。
余分なものは減らす。
でも、大切なところは残す。
そのバランスが必要です。
これは、患者さんへの説明でも、学生への講義でも同じです。
相手に合わせて説明することは大切ですが、相手が理解できないだろうと決めつけて、最初から内容を薄くしてしまうのは少し違います。
また、「やさしい言葉にする」ことが、曖昧な表現に置き換えることになってしまう場合もあります。
難しい言葉を避けた結果、何を指しているのかわからなくなったり、条件や違いが見えにくくなったりしては、本当にわかりやすくなったとは言えません。
やさしく伝えることと、正確に伝えることは、どちらか一方を選ぶものではないと思います。
必要なのは、難しい内容を避けることではなく、難しい内容をどう伝えるかを考えることです。
言葉はやさしくできる。
順番も工夫できる。
例を加えることもできる。
でも、曖昧にする必要はありません。
内容まで薄くする必要もありません。
わかりやすさと、内容の深さ。
やさしさと、正確さ。
どちらも両立できるはずです。
私は、できるだけ「やさしいけれど、薄くない。わかりやすいけれど、曖昧ではない」説明を目指したいと思っています。
もっとも、これがなかなか難しいのですけれど。

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